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No  124

心開かせた母の愛 自閉症の息子と共に歩み20年余、障害児教育の専門家に

 「息子を助けられる母親になりたい」。他人との意思疎通が難しい「高機能自閉症」の一人息子を支え続け、発達障害の専門家となった女性がこの春、金大に研究者として着任した。体当たりの育児の合間に障害児教育を学んで二十年余。わが子を変え、同じ病に悩む多くの親子を助けてきた「母の力」を、金大で障害児支援の方法確立に役立てる。
 大阪府高石市出身の高橋和子さん(49)は今年四月、金大に発足した「子どものこころの発達研究センター」に特任助教として招かれた。高機能自閉症の長男(22)について書いた論文で学位が与えられたのだ。
 大阪で地理学の研究者を目指していた高橋さんが長男を出産したのは一九八六年三月。夫婦は元気なわが子の誕生を喜んだが、生後半年過ぎから育児は困難を極めた。一日四時間ほどしか眠らず、起きている間は嘔吐(おうと)し泣きわめく。公園へ連れて行っても遊ばない。何より「親子に通い合うはずの温かさが感じられなかった」が、不安の正体は分からなかった。
 一歳六カ月児健診で言葉の遅れから自閉症の可能性を指摘され、高橋さんは独学で子どもの障害について調べ始めた。「治らないと分かっていたけど助けたくて」。専門書を読みあさり、研究者の講義や研修にも積極的に足を運んだ。
 「嫌なことがあるたびパニックを起こしていたら社会生活が送れない」。泣きわめくことでしか意思を伝えられない長男の手を取り、言葉やしぐさでコミュニケーションを取る方法を根気よく教え続けた。長男が初めて言葉を発したのは三歳八カ月の時。小学校に入学すると、高橋さんも大阪教育大に入って言語障害教育を学んだ。
 「友だちのからかいを真に受けてトラブルになることがあります」「威圧的な態度や大声でパニックを起こすことがあります」。長男の病気と症状、対処法を詳しく記した学校向けの「マニュアル」を作り、教員に配った。これが国立の研究所が策定した発達障害児の教育支援マニュアルの原本にもなった。
 「お母さん、人生冬の時もあるんだ。頑張っていればまたいい時も来るから」。高橋さんは数年前、落ち込んでいた時に長男が掛けてくれた言葉が忘れられない。「人の気持ちが分かりづらい息子とこんな会話ができるようになるとは」。その長男は今、一人暮らしをしながら京大で自閉症の研究をしている。
 発達障害の支援について「欠点も含めて子どもの特徴を認め、その子が持つ力でより良く生きていくのを手伝う気持ちが大切だ」と説く高橋さん。「子育てを楽しむことを忘れないで」とほほえむ目は、子を慈しむ母の愛にあふれていた。(5月11日北國新聞社)
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